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田舎への憧れ
 私は大阪の岸和田市で生まれて、小学校に入る前に大阪市内に引越しました。買い物や遊ぶ場所にも不自由しなかったので「都会っ子」と言って良いかもしれません。たった一つの田舎との接点は、夏休みに遊びに行った田舎のおじいちゃん、おばあちゃんの家でした。長い時で2週間ほどだった田舎での暮らしは、子供だった自分にはとても退屈なものに思えました。近くにスーパーやコンビニはおろか、当時は自販機も置いていませんでした。この田舎の生活があまりに不便と思い、むしろ、自分が都会で暮らしていることによって受けることのできる恩恵に感謝していたくらいでした。

 しかし、大学を卒業し、プログラマー・SEとして多忙な社会人生活を送るようになってから自分の生活に疑問を抱き始めたのです。それは、大学時代仲の良かった友人からの近況報告メールがきっかけでした。そのメールには、彼が東京の会社を辞めて北海道の田舎にIターン就職することを決心した、といったようなことが書かれていました。メールに添付された画像ファイルを開けてみると、彼が奥さんと子供二人と一緒に、旅行用のパンフレットに使われてもおかしくないような、いかにも北海道といった感じの自然の中で楽しそうにしていました。

当時の私は朝の5時に起き、満員電車に揺られ、夜の10時には疲れ果てて家のベッドにもぐりこむ、といった毎日でした。給料はそれなりに良かったですが、あまり感慨のない無機質な生活だったとも思います。「田舎というのも悪くはないなあ」と、旧友からのメールをきっかけにあこがれを抱くようになりました。それからは休日に田舎の物件情報を調べたり、田舎暮らしを書いた本を読んだり、少しずつですが田舎で暮らしている自分をイメージするようになりました。




憧れの実現へ
 田舎への憧れを持ちながらサラリーマン生活をずっと続けていましたが、ITバブルが崩壊した頃から少しずつ会社の業績も悪化してきました。ボーナスのカットだとかリストラだとかが自分の社内でも言われるようになり、このまま残り続けるか、エンジニアとして別の会社に転職するか、自分の憧れを実現するか、大いに悩みました。ちょうど好条件での早期退職の募集があった時期に妻にも相談してみると、「そうね。田舎で暮らしてみるのもいいんじゃない」と拍子抜けするほどあっけなく、私の夢に賛成してくれました。この結論が正しいのかどうかは分かりませんでしたが、これが最後の一押しでした。

 妻もそれまで私が田舎暮らしの情報を集めていたのは知っていましたが、今度は二人で具体的に話を進めていきました。今後の生計については幸いなことに、私が営業的な仕事もしていたおかげかパートナーにも恵まれ、フリーでやっていくのも大きな不安はありませんでした。ただ、その都合上関西圏からあまり離れることはできず、妻ともあれこれ話し合った結果、奈良県南部の吉野郡に新居を構えることにしました。

 住居は最初は、古民家を購入して改築(リフォーム)するというのが希望でした。やはり広い庭や畑、縁側で夏にスイカを食べたりに憧れがあったからです。しかし実際に不動産屋さんに聞いたり、自分で調べてみると、古民家には不便な面も多く、またリフォーム費用も数百万〜一千万くらいかかる場合があると聞き、結局は新築の住居にしようと決めました。具体的な間取りや値段は想像にお任せしますが、大阪市内で2LDKのマンション住まいをしていた頃と比べると当然広くなりました。会社員時代の給料がそれなりに良かったとはいえ、さすがに現金一括払いは無理でした。ちょうど一人目の子供ができたばかりで、今後も色々ものいりなのを考えると仕方ないこととは思いますが。縁側こそありませんが、それなりに機能的で、将来的に子供が3人になっても大丈夫なくらいの間取りにしています。面倒だと思っていた登記関係も、妻の実家の親類が法律関係の仕事をしていたお陰でトラブルなく完了しました。




新しい生活
 引越しは普通の業者さんに頼んで一日で済み、すぐに住民票移転、健康保険等の必要手続きも終わらせました。とりあえず引越しでご近所に挨拶に行ったのですが、田舎では人口密度の関係等から、半径500メートルくらいがみんな「ご近所さん」という感じでした。よそ者には警戒心が強いんじゃないか、とも心配していましたが、とても丁寧に出迎えてもらい、こっちが逆に恐縮したくらいです。とりあえずウチの奥さんも、これならご近所づきあいもやっていけそうと安心していました。

近所に深夜営業のコンビニもない生活に最初は少しとまどいましたが、仕事や生活に必須の電話やネット回線も整い、月1〜2回は気晴らしも兼ねて隣の五條市まで車でショッピングに行ったりもしています。田舎に移住してきてもちろん失ったものもあると思いますが、得たものの方がとても大きかったと今は満足しています。



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